家庭犬のしつけ
犬が人の社会で幸せで楽しく暮らすために、飼い主さまと犬との間に適正な社会関係を築き、飼い主さまが犬をコントロール出来るように、家庭犬としてのマナーを身に付けさせる学習のことを言います。
また、身知らぬ人や他の犬、猫、動物に出会っても平和的かつ友好的に共存していけるように、犬に好ましい社会性を身に付けさせることを言います。
まず犬のことを理解しましょう
●犬の習性やボディランゲージ、犬種の特徴を理解する
犬にとって正常な行動は、必ずしも人にとって好ましい行動とは言えません。
例えば、吠える、物をかじる、あちこちで排泄をする、といった行動は犬にとっては正常でも、人からすると困った行動になることもあります。
人と違って言葉を話さない犬は、体を使って気持ちを表現します。
それをボディランゲージと言います。
例えば、嬉しい時に尾を振り、怖い時は尾は下げます。
他にも顔や、耳、体全体、動作などでも犬は自分の気持ちを表現しています。
犬は昔から人と一緒に暮らしてきました。昔は単に愛玩のため、というより、犬種により、犬に仕事をさせ、支え合って協力して生活してきました。
例えば、現在日本にたくさんいるダックスフンドは元々ドイツで狩猟犬として活躍していました。
複数頭でアナグマの狩猟をしていたダックスフンドは、穴にもぐるため、胴長短足といった体型をしています。
とても愛らしい姿ですが、その体型にはこういった理由があります。
また、地面をよく嗅ぐのは獲物を探すため、そして、太く通る声は、穴に潜り、獲物を発見した時に外へ届くように、一頭では大人しくても複数になると一斉に吠えるのは複数頭で狩りをしていたため、と、外見だけでなく行動等もちゃんと理由があります。
●生活のニーズを満たす
(=動物福祉の5つの自由を満たす)
適切な食事と水、安全で安心な休息場所、安全で安心な飼い主、運動欲求、作業欲求、社会性を身に付ける、健康管理、性的な欲求(満たすことができないのなら欲求を取り除く)
これが満たされないと問題行動へとつながることが多くあります。
●犬がどう学ぶか理解する
当院では褒めることで、犬自身に自信をつけ、自発的に楽しんでトレーニングが好きになるようにしつけることをおすすめます。
言葉が通じない相手に教えることは根気が必要となります。
母犬が根気強く仔犬を育てるのと同じように、飼い主さまにも母犬の代わりとなって愛情をもって育てていただきたいと思います。
犬の学習の仕方は、犬自身にとって得なのか、損なのか、で学習します。
例えば、スリッパをくわえると飼い主さまが素早く反応して追いかけてきてくれる=犬にとって得、となります。
同様に、おもちゃで一人で遊んでると飼い主さまは無関心=犬にとって損、即ち、おもちゃで一人で遊ぶより、スリッパをくわえて走り回ったほうが犬にとっては楽しく得となります。
従って、スリッパをくわえて走り回ってしまう、という人からすると困った行動は、犬からすると飼い主さんとの楽しいコミュニケーションになってしまっていますので、得と損の入れ替えをしておもちゃで遊んでくれるように教えてあげます。
(補足:スリッパは片付け、犬がとれないように管理します。
可能であれば、スリッパをくわえる習慣が無くなるまで使わないようにしておくと犬にとって分かりやすいかもしれません。
おもちゃが好きになるまで一緒に遊んであげます。
一人で遊んでる時も褒めたり、声をかけたり、またはおもちゃにフードを隠し入れたりして、犬にとっておもちゃで遊んでることが得となるようにします。
また、常に同じおもちゃをずっと部屋に置いたままにすると、飽きたり、インテリアの1つになってしまうので、おもちゃの管理もして、日替わりでおもちゃを交換することもおすすめします。)
問題行動
問題行動とは、人にとって問題な行動のことを言います。
例えば、上記の一例や、甘噛み、吠え、トイレの失敗等です。
それらを解決するにあたり、マニュアルはなく、その犬の性格、飼い主さまとの関係、住環境、生活環境により異なります。
『人と動物の双方が幸せに暮らすこと』がとても大切なので、どちらかが悪い、仕方がない、と全て諦めず、良い方向に関係を築く努力を一緒にしませんか。
内容により、専門医やインストラクターをご紹介する場合もありますが、まずお気軽に声をかけていただければと思います。
細かくお話を伺いますので、個別にご相談承ります。
山浦 来未
・愛玩動物看護師
・JAHA家庭犬しつけインストラクター